ヨガをしていると、
「身体が硬いから、このポーズはできません」
という言葉をよく聞きます
確かに、柔軟性が足りなくて難しいアーサナはあります
でも私は、「できない=身体が硬い」と、それだけで片づけてしまうのはもったいないと思っています
なぜなら、長くヨガを指導していると、身体が柔らかくてもできない人もいれば、決して柔らかくはないのにできる人もいるからです
では、その違いは何なのか
私は「できない」という結果だけを見るのではなく、その人がなぜできないのかを探すことが大切だと思っています
柔軟性も体幹もあるのに、できない
以前、柔軟性もあり、体幹もしっかりしている生徒さんがいました
ところが、アームバランスやシルシャアーサナなどにチャレンジすると、なかなかできません
身体的にはできそうなのに、どうしてだろう?
身体の使い方を見ながら指導していましたが、あるとき本人に聞いてみて、初めて大きな理由がわかりました
「怖い」
私はそのとき、ちょっと驚きました
というのも、私自身はアーサナにチャレンジするときに「怖い」と感じたことがほとんどなかったからです
だから、
「怖いという感情が、こんなに身体を止めることがあるんだ!」
ということ自体が、私にとって新しい発見でした
同時に、考えてみれば当たり前のことでもあります
怖さを感じたときに身体にブレーキがかかるのは、危険から自分を守ろうとする自然な反応でもあります
頭では「やってみよう」と思っていても、身体は「危ない」と判断して止まる
人間や動物に備わっている、自分を守る仕組みってすごいなぁと思いました
「怖がらないで」では解決しない
だからといって、
「大丈夫だから!」
「怖がらずにやってみて!」
と言って、そのままチャレンジしてもらえばいいとは思いませんでした
本人が怖いと感じているのだから、まずは怖さを小さくできる方法を考える必要があります
逆転のポーズなら、壁に近いところで行う
一人ではなく、ペアで練習する
必要であれば、3人でサポートする
そして、ただ支えてもらって安心するだけではなく、どう身体を使えば安定するのかも伝える
自分では身体がどうなっているかわからない場合には、鏡を使ったり、動画を撮ったりして、実際の動きを確認してもらうこともあります
そうやって「怖いもの」にいきなり挑むのではなく、安全に取り組める方法を一つずつ増やしながら練習していきました
すると、その生徒さんは少しずつできるようになっていきました
私にとっても、とても印象に残っている経験です
「できない」には、いろいろな理由がある
この経験もあって、私は「できない理由」を一つに決めつけないようにしています
柔軟性が足りないこともあります
筋力が足りないこともあります
必要なところに力を入れられていなかったり、逆に力まなくていいところに力が入っていたりすることもあります
バランスや、いくつもの動きを同時に行う協調性が関係していることもあります
身体の使い方そのものが、まだわかっていない場合もあります
そして今回のように、身体能力ではなく「怖い」という感情が大きなブレーキになっていることもあります
しかも実際には、どれか一つだけではなく、いくつかの理由が重なっていることもあります
だから、アーサナを見ただけで
「身体が硬いからですね」
「筋力がないからですね」
と簡単には言えないのです
見るだけではわからないこともある
そして、この生徒さんの経験からもう一つ学んだのは、
指導する側が身体を観察しているだけでは、わからないこともある
ということです
「怖い」という感情は、身体を見ているだけではわかりませんでした
本人に聞いたから、初めてわかったことでした
これは私にとって、とても大事な気づきです
指導者が「この人はここが弱いからできないんだろう」と考えることはできます
でも、それが本当にその人の「できない理由」なのかは、わからないこともあります
だから私は、身体を見ることと同じくらい、その人が何を感じているのかを聞くことも大切にしたいと思っています
観察する
本人に聞く
方法を変えてみる
やってみた結果を、また見る
その繰り返しです
方法を知ると、世界が広がる
もちろん、すべてのアーサナをできるようにする必要はありません
怖いものを無理に克服しなければいけないとも思いません
身体の状態によっては、やらないほうがいいこともあります
でも、「私にはできない」と思っていた理由がわかって、安全に取り組める方法があるのなら、選択肢は増えます
壁があるならやってみようかな
誰かに支えてもらえるなら挑戦できるかもしれない
身体の使い方がわかれば、さっきより怖くない
そんなふうに、一つずつできることが増えていく
私は、その過程が好きです
アーサナが一つ完成することだけが目的なのではなく、
「できない」と思っていたものに対して、
「この方法ならできるかもしれない」
という選択肢が生まれる
それだけでも、その人の世界は少し広がると思っています
だから私は、「できないですね」で終わらせたくありません
身体が硬いから、だけでも終わらせたくない
その人を止めているものは何なのか
身体を見て、本人の感覚を聞いて、一緒に探していく
そして方法があるのなら、それを伝える
それが、私がヨガを指導するときに大切にしていることの一つです
